やなこクラブ

あぁ^~果てしない~

夢を持たなかった小学生の話

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「無し」(笑)


それは小学4年生の頃だった。


学級末が近づくとクラスで学級文集を書く行事があった。

A3の大きさで1人1枚。

内容は自分の特技、趣味などプロフィールを書くよくあるもの。

各々書き終わると、教壇で待つ先生の元へいそいそと提出しに行く。

自分も同じように記入して提出した。

 

 

後日、提出された用紙は製本された。

先生は両手いっぱいに積み重なったそれを教室に運んできた

前の席から文集を1人1部ずつ手元に置き、後ろへ後ろへと束はまわされていく。

やがて自分の机にも到着した。

 

手元につくとみんなその本をパラパラと見ていく。

本は1ページ、また1ページとめくられ、その音は教室内に響く。

 

色々書いてあったが、一番目に付いたのは

 

「しょうらいの夢」

 

だった。

 


クラスの人気者は

「やきゅうせん手」、「サッカーせん手」。

女の子は

「お花やさん」、「おかしやさん」。

 

騒がしいあいつも

「けいさつかん」。

 

謎なあいつも

「タクシー運てん手」。

 

あぁみんな何かあるんだ。

そう思った。


その時、ゲラゲラと笑う声が教室を包んだ。

 


「無し」(笑)

 


みんなが見ていたのは僕のページだった。

そう、僕は「将来の夢」に「無し」と書いて提出したのだ。

理由は当然、夢が無かったから。

やりたいこともなければ、特技もない、

趣味も無理やりひねり出した「読書」。

毎日ゲームばかり。

だからあるわけがなかった。


でもそれはみんなとは確かに違くて

その証拠がこの大爆笑。

なんか恥ずかしかった。

自分だけが迷子だったのかと。


道徳の授業は終わった。

夢に「無し」なんて書いたのはクラス中たったの1人だった。

一目散に家へと帰った。

帰宅すると、少年はマリオの勉強机に向かう。

ランドセルで持ち帰って来たその文集を取り出して自分のページを開いた。


そして、将来の夢の「無し」の上に

HBのえんぴつで


「いまは」


と、書き加えた。

 

 

あれから大分経った。

気づけば自分が先生ぐらいの歳になっていた。

将来の夢は相変わらずまだ「無し」のまま。

けど、目標はある。

そんなんでいいんじゃないかなって今は思います。

 

 

おわり。

 

とりあえずブログ再開しました。 また書きます。